行政処分と行政指導の違いとは?!
2015/8/26
※次回、9月のテーマは「個人情報保護」を予定しております。今しばらくお待ちください。
8月のテーマです。
自治体がまちづくりを進めるに当たっては、①自治体と住民とが合意して住民に活動してもらう方法②住民に対して強制的に活動するよう義務を負わせる方法 ③住民が自分の意思で活動するよう導く方法の3つがあると考えられます。
①は契約、②は行政処分、そして、③は行政指導です。
今回は、②の行政処分と③の行政指導がテーマです。
②の行政処分は、住民に義務を負わせるものですから法律や条例(法令)の根拠が必要です。ここでいう法令の根拠とは法令の「○○しなければならない。」 という義務の規定のことではありません。「長は××に該当する者に対して、○○を命じることができる。」という命令の規定のことです。この命令によって 住民に義務が発生します。「××」に書かれる言葉、つまり要件の解釈がとても重要になりますね。
③の行政指導には法令の根拠は必要ありません。しかし、その行政指導に携わる職員が行政指導の内容を所管する部局に所属していなければなりません。具体 的には、事務分掌条例や事務分掌規則で判断されます。ただ、実際には、行政指導も法令に一定の場合は行うことができると規定されている場合も多くありま す。もちろん、②の行政処分に携わる職員にも組織法上の根拠は必要です。
行政処分や行政指導にはさまざまな種類や役割があります。また、お互いが組み合わさって複雑な効果を生んでいる例も少なくありません。
では、まずは、両者の違いと区別について、実例を挙げながら議論していきましょう。
1: ぷよぷよ
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2015/07/29 21:15:59
「行政処分」は、権利義務の影響を与えるような「公権力の行使」によるものと解してよいのでしょうか?
住民票の発行は、「申請に基づく処分」?
「行政指導」は、窓口対応のどの範囲までを指すのでしょうか?
以前に窓口で、規制行政に関する申請について説明した際、「ご照会の内容では対応できないと思われます」と、当方は制度の説明をしたつもりだったのですが、「行政指導なら文書でよこせ」と言われて困惑したことがあります。
法令に根拠がないのであれば、行政指導と捉えるか否かは、相手の判断しだいなのでしょうか?
2: 北法研 パピコ
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2015/07/29 23:04:45
お悩みよくわかります。
所管されている事務にもとづく場合が
ひとつの判断材料にはなるのかと?
所管事務に関することで「お願い」なら行政指導
と捉えられても仕方ないですかね?(乱暴ですけど)
法令に根拠があっても行政指導の場合もありますよね!
3: くすのき
- 2015/07/31 16:10:02 行政指導には、根拠はいらないし、法的な効果もないのですから、行政指導と[それですらないもの]の区別は、つけようがないし、つける意味もないのではないですか
4: ぷよぷよ
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2015/07/31 20:11:38
>つけようがないし、つける意味もないのではない
であればこそ、窓口にいらした方に、どのように説明してよいか困惑してしまうのです。
まして、行政手続法が改正されて、取扱いの厳格さが求められると聞きます。
5: 北法研 パピコ
-
2015/07/31 20:27:40
法令に根拠がある場合の行政指導と行政処分の区別は大切ですか?
義務付けに違反していても
命令に至るまで、警告、勧告の行政指導を行うほうが多いですが
なぜすぐに命令しないのですか?
住民のためには迷惑をかけている義務違反者に
すぐに命令するべきではないですか?
6: 北法研 パピコ
-
2015/07/31 20:38:44
ぷよぷよさんとかぶりましたね。
スミマセン。
所管事務に関してお願いすれば、それは行政指導に
なってしまうのでしょうか?
許認可等を盾に、強権的な行政指導さえしなければ
行政指導はただのおねがいなので
(受け入れるかは相手の任意)
数が多くなっても問題ないのではないでしょうか。
7: bottom
- 2015/08/03 00:07:25 行政指導をするかしないかは、行政庁の裁量だと思うので、感情的には、即座に改善命令などの行政処分をしたくなりますが、行政処分は一方的に相手方に義務を課すことになるので、同じ効果が得られるのであれば、相手方の権利侵害がより少ない行政指導を行うということではないでしょうか。
8: 北法研 パピコ
-
2015/08/06 19:01:48
確かにそうですよね。
でも行政指導してもどうせ改善してくれないし、
行政指導を継続しているあいだは違反を放置していることになるので
判断が難しいです。
ぷよぷよさんのコメントについてうちの職員に聞いてみました。
行政手続法の手続きにそった指導=行政指導
行政手続法の手続きを踏まない指導=ただのアドバイス
で整理しているそうです。
(相手の話をループさせる作戦かと)
私が担当している事務で、
検査に合格しないと使用できないものがあります。
検査申請→検査→合格証交付→使用可能
ですが、許可とか認可のような名称はついていませんが
これも行政処分ですか?
9: くすのき
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2015/08/07 18:11:19
行政指導でも、義務違反の改善を内容として命令の前段に行われるものであれば、法令の根拠がなくても理解が得られやすいですね。
問題は、義務違反がない場合の行政指導です。
マンション紛争の際に、建築確認が得られる申請について、住民の反対を契機として申請の内容を変更するようにというパターンの行政指導です。
有料公園で「犬禁止」の看板を見かけますが、条例には規定はないですね。これも、「義務なし行政指導」ですね。
ぷよぷよさんの4の趣旨もそういうことですね。
10: ぷよぷよ
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2015/08/10 22:07:46
なるほど。行政指導には「法の根拠」は有しない。
とはいえ、その実施に際して、行政処分の前提となるものであれば、特にその目的を留意して行う必要がある。
また、法で義務付けがないものであっても、行政の目的達成のために、行政指導を行うことができる。
といったところでしょうか。
となると疑問になるのが、行政指導を行う場合の「基準」です。
「法による行政の原理」といいます。
権利義務に影響を与える公権力の行使は、民主的な手法に基づいて制定された「法」に基づかなければ行うことができない、といったものであったと記憶します。
行政指導は義務付けを行えない「お願い」ではありますが、その根拠が「法」になければ、何を根拠に実施すればよいのでしょうか?
形式的には「要綱」or「基準」?
上記の例で言えば、「苦情があったし、犬は禁止にしとこうか」という担当者の判断でよいのでしょうか?
11: 北法研 パピコ
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2015/08/11 19:09:04
法に根拠のないことも、所掌事務ならば行政組織に内在する権限
として行政指導することは可能と思います。
ただし、平等、公平原則には配慮する必要があると思いますが
いかがでしょうか?
12: くすのき
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2015/08/15 10:51:57
>行政指導は義務付けを行えない「お願い」ではありますが、その根拠が「法」になけれ
>ば、何を根拠に実施すればよいのでしょうか?
>形式的には「要綱」or「基準」?
>上記の例で言えば、「苦情があったし、犬は禁止にしとこうか」という担当者の判断で>よいのでしょうか?
義務違反に対する行政指導であれば、義務違反の有無が基準ですね。
義務違反がない場合の行政指導については、判断が難しいですね。少なくとも、「住民が反対しているから」という理由だけで業者の適法行為を自重したり、住民との話し合いを指導することには正当性はないですね。
一見、「正義の味方」のように見えますが。
13: bottom
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2015/08/15 13:11:21
義務違反がなくても、いささか、平等や公平原則からみて問題があっても、正当性に怪しいところがあっても、それでもできることに、行政指導の良さがあるのではないでしょうか。
当然、相手方には、これが単なる「お願い」であってその行政指導を無視しても何のペナルティもないことを伝える必要はあるとおもいますが。
14: 北法研 パピコ
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2015/08/20 22:40:44
「お願い」ではない行政処分についてですが、命令や許可のようにはっきりと
命令とわかるもの以外に「検査」「承認」や要綱でも処分性があるとされたも
のがありますが、「処分」の定義はあるのですか?
「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為によって、直接国民の権利義
務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」
との判例もありますが、どのように考えればよいのでしょうか?
「契約」も相手の権利義務を形成しその範囲を確定すると思いますけど・・・
今月のまとめ
2015/8/31
行政指導は、①「法令や条例に根拠があるか」、②「法令や条例に定める義務を守らせるためのものであるか」の2つの観点から分けることができま す。一番多いパターンが「法令や条例に根拠があり、義務を守らせるため」の行政指導です。この場合、行政指導の内容は、その根拠法令に規定され ている「○○してはならない。」又は「○○しなければならない。」という義務を守るためのものになります。
また、行政指導には、まず「指導(助言)」をし、それから「勧告」をするという複数の段階が規定されていることもあります。
ただし、仮に法令に義務違反に対する命令の規定だけがあって、行政指導を行うという規定がなくても「いきなり命令せずに、まずは指導してみよ う。」という対応が一般的です。
次に、「法令や条例に根拠がなく、義務を守らせるためのものでもない」行政指導は、法律で認められている行為の全部や一部を自重したり、義務が ないことを行ったりするようお願いするものです。
例としては、マンション建設の際に周辺の住民の反対運動が起こったときなど、「住民とのていねいな話し合いを」などの行政指導をすることがあり ます。このような場合、行政指導の正当性や必要性を行政指導の相手方に説明し、納得してもらうのはとても難しいことです。
この型の行政指導を行う必要がある場合は、特に、行政手続法32条・33条の趣旨に則って、「相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、 不利益な取扱いをしてはなら」ず、相手方が「行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること」がないように気 を付ける必要があります。
行政指導には、法的拘束力はありませんが、公益性や客観性が要求されることはいうまでもありません。基本的に行政指導は、「法令の義務の履行を 命令の前に、まずは、自主的に促すもの」、または、「申請者など行政指導の相手方の利益になる場合に行うもの(例:許可要件を効果的に満たす方 法などの申請における技術的指導)」だと理解してください。