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自治体コモンズとは

補助執行・事務委任に伴う例規整備

2019/10/27

行政行為を行う権限は、長(市町村長や知事)のほか、監査委員や教育委員会のような行政委員・行政委員会に分担されています。 これは、権限が1か所に集中しないような法制度によるものですが、限られた人的資源で効率的な行政運営を図るため、長と行政委員・行政委員会(それらの職員を含む)との間で、補助執行・事務委任の手段により業務の便宜を図ることができます(地方自治法180条の2・180条の3)。 それでは、長が他の執行機関やその職員に補助執行・事務委任させる場合において、例規の整備はどのように行うべきでしょうか。 他の執行機関が長の職員に補助執行させる場合も含め、確認していきましょう。

1: ぷよぷよ

2019/11/03 23:50:25  大前提としての確認です。
・補助執行 事務の「手足」となるものであり、対外的に提示する行政庁(行政行為の主体)の名称は、本来権限者となる。
例)「長→教育委員会」の補助執行:対外的な名称は「長」
・事務委任 権限自体が移管されるので、対外的に提示する行政庁の発信名称は、委任を受けたものとなる。
例)「長→教育委員会」の事務委任:対外的な名称は「教育委員会」

2: ぷよぷよ

2019/11/03 23:50:48  長の権限を教育委員会に行わせる例として、どのようなものがあるでしょうか?
 予算の執行は長の権限ですので、教育委員会の職員が伝票を切ることは、本来はできません。
 私立学校に関する事務は、教育委員会ではなく長の権限です。
 これらについて、教育委員会が所管する他の業務(予算執行の根拠となる事業執行、公立学校に関する事務など)との関連から法律的な行政運営を図るために教育委員会が行うため、長から教育委員会への補助執行・事務委任の仕組みが活用されるわけです。

3: ぷよぷよ

2019/11/07 19:18:13  行政委員・行政委員会(それらの職員を含む)に対する補助執行・事務委任は、協議によって行われるものとされるため、基本的には、例規上の措置とは関係なく行われるものです。

4: ぷよぷよ

2019/11/07 19:21:05  ただし、執行機関相互の事務分担の内容を明確にするため、対象となる事務について例規上明する例は少なくありません。
例)藤沢市長の権限に属する事務の補助執行に関する規程(https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/gyousei/reiki/reiki_honbun/g207RG00000137.html
  春日井市長の権限に属する事務の補助執行に関する規則(https://www2.city.kasugai.lg.jp/somu/reiki/reiki_honbun/e000RG00000694.html
  沖縄市教育委員会に対する事務委任規則(https://www.city.okinawa.okinawa.jp/zyoureikun/act/frame/frame110000078.htm
 補助執行の対象を定めるものが「訓令」「規則」がある一方で、事務委任の対象を定めるものは「規則」が一般的であるようです。

5: ぷよぷよ

2019/11/10 21:33:09  それでは、
・補助執行の対象を定めるもの → 「訓令」or「規則」
・事務委任の対象を定めるもの → 「規則」
が一般的であるのは、なぜでしょうか?
 
 これは、他の執行機関の職員に対する補助執行は「当該執行機関の職員を自らの部下にするもの」であり、その具体的な対象を職務命令たる「訓令」で定めることに差し支えないという考え方によるものと思われます。
 ただし、補助執行は、他の執行機関自体を対象とすることができますので、その際は、職務命令たる「訓令」より自治立法たる「規則」によることが適当であるかと考えられます。
 
 一方で、事務委任においては、委任を受けた執行機関が自らの名称で対外的行為を行うことになるため、一般に職員に対して行われることは少なく、執行機関自体に行われることになるため、自治立法たる「規則」が選択されるのではないでしょうか。

6: ぷよぷよ

2019/11/19 20:31:27  それでは、対象事務を列記するのではなく、補助執行・事務委任について、個別の例規に規定される例としてはどのようなものがあるでしょうか。
 長が定める財務規則に、他の執行機関の職員が予算の執行を行う場合における意思決定の専決区分を定める例は少なくありません。

7: ぷよぷよ

2019/11/19 20:38:53  本来、長以外の行政委員・行政委員会には予算執行の権限がありません。したがって、それらの職員が伝票を処理することは、原則としてできません。
 ところが、具体的な事業執行(教育委員会における、学校の清掃業務委託など)とこれに伴う支出行為が分離すると事務上の支障が発生しかねないことから、本来は長の権限である支出行為を「補助執行」によって他の行政委員・行政委員会の職員に行わせることになるわけです。
 この際、対象となる行政委員・行政委員会における意思決定の専決区分(○○円以上の支出負担行為は部長決裁など)を財務規則に定めておくわけです。

8: ぷよぷよ

2019/12/04 20:45:41  それでは、補助執行・事務委任の場合において、条例に基づく長の事業を教育委員会行わせるときは、例規ではどのような規定ぶりになるでしょうか。

 「補助執行」は、長による執行について、他の執行機関またはその職員に行わせるものです。したがって、
・条例中の委任の規定は、「この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。」
・「〇〇条例施行規則」は、長の規則によって定められる。

 「事務委任」は、長の権限を他の執行機関に行わせるものです。したがって、
・条例中の委任の規定は、「この条例の施行に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。」
・「〇〇条例施行規則」は、教育委員会規則によって定められる。

9: ぷよぷよ

2019/12/04 20:46:56  後者による場合、前述の「教育委員会に対する事務委任規則」には、事務委任の対象として規定がされることになります。
 「事務委任規則」に列記された事項について、条例に委任の旨が書かれることについて、「条例・規則」の主客が転倒するように思われる方もいるかもしれません。
 しかしながら、前述のとおり、事務委任については、本来協議によって行われるべきものであり、その対象を列記した規則が定められていたとしても、対象となる事務の対外的な明示が目的ですので、「条例・規則」の主客が転倒するもではありません。

今月のまとめ

2020/01/07

行政委員や行政委員会に対する補助執行や事務委任は、効率的な行政を実施するための仕組みです。それら対象事務は、協議によって行われるとされているほか、訓令や規則の形式をとっている例もありました。その例規も事務の性質や目的等を踏まえ規定されていることがよくわかりました。効率よく適切に事務を行うためには、常に事務の趣旨目的や法の規定を確認して、権限の補助執行や事務委任をすることが大切なのですね。 議論の模様は、「過去のコモンズ」の『補助執行・事務委任に伴う例規整備』からご覧ください。次回のテーマは次週公開いたしますのでしばらくお待ちください。


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