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自治体コモンズとは

マイナンバー法による条例整備 

2015/9/30

◎注目の改正個人情報保護法が成立いたしました。 そこで10月もテーマを続けてまいります。マイナンバー法・個人情報保護法制に関する 疑問や意見をお気軽にお寄せください。みんなで共有しましょう。

「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「番号法」という。)により、今年(平成27年)10月からマイナンバー(個人番号)の通知が始まります。番号法では、集約された個人情報の漏えいによる個人のプライバシー権等の侵害、成りすましによる被害などの懸念があるため、次のような保護措置等を講じられています。

・個人番号の利用範囲を番号法及び条例に規定された行政事務・手続に限定する。
・特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の収集・保管等を厳格に制限
・問題が発生する前にリスク分析を行う特定個人情報保護評価制度の新設
・不正行為に対する罰則の強化
・特定個人情報の取扱いを監視・監督する特定個人情報保護委員会の設立等
・マイ・ポータルによる情報提供記録の確認

この中で、地方公共団体に関しては、特定個人情報の安全管理措置や特定個人情報の提供制限等ついては、番号法が直接適用されますが、特定個人情報や情報提供等記録の目的外利用の制限・開示等の請求等については適用がありません。 そのため、これらの地方公共団体に対し番号法が直接適用されない事項について、番号法第31条は必要な措置を講じるよう求めています。 それを受けて、それぞれの地方公共団体の個人情報保護条例を改正等する必要があります。 そのため、どこの地方公共団体でも、6月議会で対応を行ったか、あるいは9月議会での対応が予定されています。
今回は、この番号法による条例整備について議論しましょう。

「〇行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)
(地方公共団体等が保有する特定個人情報の保護)
第31条
地方公共団体は、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法、個人情報保護法及びこの法律の規定により行政機関の長、独立行政法人等及び個人番号取扱事業者(特定個人情報ファイルを事業の用に供している個人番号利用事務等実施者であって、国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等及び地方独立行政法人以外のものをいう。以下この節において同じ。)が講ずることとされている措置の趣旨を踏まえ、当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の適正な取扱いが確保され、並びに当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の開示、訂正、利用の停止、消去及び提供の停止(第23条第1項及び第2項に規定する記録に記録された特定個人情報にあっては、その開示及び訂正)を実施するために必要な措置を講ずるものとする。」

1: くすのき

2015/09/04 10:33:55  まず、個人情報保護条例とマイナンバー法との関係を整理しましょう。
 個人情報保護条例においては、目的外利用が原則禁止され、本人の同意がある場合や法令に定めがある場合は例外的に目的外利用ができます。
 マイナンバー法の対象となるマイナンバーが付された個人情報(特定個人情報)は目的外利用ができるのでしょうか。

2: bottom

2015/09/07 01:02:46 特定個人情報の提供は、原則禁止されていて、それが許されるのは、番号法19条各号に掲げる場合だけのようです。
ただ、その中に,「地方公共団体の機関が、条例で定めるところにより、当該地方公共団体の他の機関に、その事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき 」とあって、条例で定めれば他の執行機関に特定個人情報の提供が可能となっています。
で、よくわからないのですが、番号法29条1項によって、行政機関個人情報保護法8条2項を読み替えてみると、目的外の提供が「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき」など、非常に限定された場合にしかできないように読めます。
先ほどの条例で定めればokということと矛盾していないでしょうか?

3: くすのき

2015/09/08 11:30:58  「読み替え」では、提供の場合は除かれてはいないでしょうか。
 

4: くすのき

2015/09/11 15:07:59 19条各号は「提供」の場合、29条1項の場合は「利用」の場合です。
でも、bottomさんのご指摘(ご懸念?)のように、利用(実施機関内)より提供(他の機関や国、自治体)の方が利用範囲が広いというおかしなことになってしまいますね。

5: くすのき

2015/09/16 14:08:49 他にも、9条2項の「庁内連携」は、個人情報保護法や保護条例における「目的外利用」に当たるのではないでしょうか。

6: くすのき

2015/09/25 10:47:17 庁内連携においては税情報を福祉関係の事務に利用します。これは、個人情報保護条例や保護法における「目的外利用」です。

7: くうろん

2015/09/25 21:45:28 初めて投稿いたします。
ご指摘のように個人情報保護条例では「目的外利用」として扱っていた個人情報の利用が、番号法にかかると「目的内利用」に変身します。
今回、個人情報保護条例を改正して特定個人情報の保護も規定した場合には、同じ情報の利用であっても「目的外利用」と「目的内利用」とが同居することになります。個人情報保護条例がややこしくなったように思います。

8: bottom

2015/09/27 20:35:35 素朴な疑問なのですが、今回の特定個人情報について、個人情報保護条例を改正しなかった場合は、何か困ることになるのでしょうか?
個人情報保護条例に、個人情報保護法と同様の事項が規定されているのであれば、バランスを考えて、改正した方が良いのかなと思います。
しかし、例えば、現行の個人情報保護条例に開示請求、訂正請求の規定はあっても、利用の停止請求、消去請求、提供の停止請求についての規定がない場合は、わざわざ「特定個人情報」のためにそれらの規定を新設する理由はないのかなと思います。
この場合、番号法31条違反になるのでしょうか?

9: くうろん

2015/09/28 12:35:12 これまでの個人情報保護条例は、いわば自主条例です。しかし特定個人情報の保護措置は、番号法制度としての対応が求められていると考えます。
だから番号法第31条は、「必要な措置を講ずるものとする」と義務形になっているのではないでしょうか。
すると、個人情報保護条例を改正する場合は、改正後は自主的な制度と番号法の制度が混在することになるのでしょうか。

10: くすのき

2015/10/06 09:18:08 くうろんさんの7のご指摘についてです。
再論しますが、個人情報保護条例の「本人取得」と「取得時の目的使用」は条例による創設的な規定ではなく、幸福追求権などが根拠となりうる憲法的な要請だと考えることもできます。
その個人情報保護の大原則をマイナンバー法が否定しようとしていることは大きな問題です。

11: くうろん

2015/10/08 12:44:17 コメントいただきありがとうございます。「幸福追求権などが根拠となりうる憲法的な要請」?についてよく分からないので、もう少しご説明いただいてよろしいでしょうか。

12: くすのき

2015/10/09 17:06:32  個人情報をいつ誰に提供するか、あるいは、提供しないかしないかは、本人のみが決定できます。これは、個人情報に関する具体的な法令の規定を待つまでもなく、人が人であるための条件です。自分に関する情報を自分でコントロールすることを許さない社会が基本的人権を尊重する自由で民主的な社会であるはずはありません(端的に言えば、「社会」ではありません。)。「個人情報の本人コントロール」は、法律や条例の規定以前に憲法で認められている普遍かつ不変の権利であると考えます。

13: くすのき

2015/10/13 13:47:05  引き続き、マイナンバー法と個人情報保護法制との関係における問題点です。
 マイナンバー法、別表2(19条7号)には、個人情報保護条例における目的外利用、他の執行機関への提供、他の団体への提供が混在していますね。
 庁内連携(9条2項)は、目的外利用です。
 かなり、整理が必要ですね。
 

14: 北法研 パピコ

2015/10/16 00:30:45 マイナンバーに出遅れましたので、もう一度解説をお願いいたします。

マイナンバー法でいうところの庁内連携は、実態は個人情報保護条例に照らし
あわせると、同一執行機関内での「目的外利用」
それが、マイナンバー法での庁内連携になると「目的内利用」となり
個人情報保護条例上の目的外利用可能な場合に限らず、利用可能となる。
ということでしょうか?

15: くうろん

2015/10/17 20:03:24 12のくすのきさん。コメントありがとうございました。趣旨が分かりました。
また、パピコさんの整理はそのとおりだと思います。庁内連携も独自利用の条例に規定することによって、利用可能となります。

17: くすのき

2015/10/20 17:05:07 マイナンバーだけではなく、そもそも執行機関単位で個人情報の管理を行うこととなっている現行制度について、みなさんは、どう、お考えでしょうか。
福祉と税の「距離」と福祉と教育との「距離」とは実務上は変わらないと思うのですが。

18: 北法研 パピコ

2015/10/20 19:54:27 住民に身近な行政は基礎自治体でと考えると、執行機関単位で個人情報等を有しているのもや得ないと考えます。ただし、マイナンバーが執行機関内の目的外利用と執行機関外の目的外提供の差別化ができていないので不思議な距離感となっているのでしょうか?
どなたか解説をお願いします。

19: 北法研 パピコ

2015/10/20 20:01:59
執行機関単位で個人情報等を有しているのも『やむを得ない』
です。訂正します
(出張先でもう酔っぱらっております)

今月のまとめ

2015/10/30

【マイナンバー法制度】   マイナンバー法について議論してきました。新しく、ややこしい(ややこしくしている?)制度なので、法律と国が示している条例の例のそれぞれの条文ごと に図表を使ってまとめてみましょう。 まずは、個人情報の取扱いの原則を確認します。

個人情報の利用携帯

執行機関(実施機関)内部で個人情報を使うことを「利用」、執行機関の外部に利用させることを「提供」といいます。原則は、取得時に示した目的の範囲で 使用する「目的内利用」です。これは、特定個人情報についても同じです。
〔マイナンバー法〕
(利用範囲)
第9条 別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者は、同表の下欄に掲げる事務の処理に関して保有す る特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の 委託を受けた者も、同様とする。

9条1項利用範囲

〔マイナンバー法〕
(利用範囲)
第9条
2 地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例 で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することが できる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

9条2項利用範囲

〔法施行条例〕
(個人番号の利用範囲)
第4条 法第9条第2項の条例で定める事務は、別表第1の上欄に掲げる機関が行う同表の下欄に掲げる事務、別表第2の上欄に掲げる機関が行う同表の中欄 に掲げる事務及び知事(市町村長)又は教育委員会が行う法別表第2の第2欄に掲げる事務とする。

4条利用範囲

2 別表第2の上欄に掲げる機関は、同表の中欄に掲げる事務を処理するために必要な限度で、同表の下欄に掲げる特定個人情報であって当該機関が保有する ものを利用することができる。ただし、法の規定により、情報提供ネットワークシステムを使用して他の個人番号利用事務実施者から当該特定個人情報の提供 を受けることができる場合は、この限りでない。
3 知事(市町村長)又は教育委員会は、法別表第2の第2欄に掲げる事務を処理するために必要な限度で同表の第4欄に掲げる特定個人情報であって自らが 保有するものを利用することができる。ただし、法の規定により、情報提供ネットワークシステムを使用して他の個人番号利用事務実施者から当該特定個人情 報の提供を受けることができる場合は、この限りでない。

4条3項利用範囲

〔マイナンバー法〕
(特定個人情報の提供の制限)
第19条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。
七  別表第二の第一欄に掲げる者(法令の規定により同表の第二欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を 含む。以下「情報照会者」という。)が、政令で定めるところにより、同表の第三欄に掲げる者(法令の規定により同表の第四欄に掲げる特定個人情報の利用 又は提供に関する事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報提供者」という。)に対し、同表の第二欄 に掲げる事務を処理するために必要な同表の第四欄に掲げる特定個人情報(情報提供者の保有する特定個人情報ファイルに記録されたものに限る。)の提供を 求めた場合において、当該情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供するとき。
九  地方公共団体の機関が、条例で定めるところにより、当該地方公共団体の他の機関に、その事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供する とき。
〔法施行条例〕
(特定個人情報の提供)
第5条 法第19条第9号の条例で定める特定個人情報を提供することができる場合は、別表第3の第1欄に掲げる機関が、同表の第3欄に掲げる機関に対し、 同表の第2欄に掲げる事務を処理するために必要な同表の第4欄に掲げる特定個人情報の提供を求めた場合において、同表の第3欄に掲げる機関が当該特定個 人情報を提供するときとする。

5条特定個人情報の提供

マイナンバー法の制度は個人情報保護法制の特例であることを理解することが同法の適正な施行に繋がります。

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