地方公務員制度(勤務条件・人事評価等)について
2016/5/24
◎前回のテーマ「自治体相互の「連携・協力」を学ぼう」の『まとめ』を掲載いたしました。過去のコモンズからご覧ください。
私たち地方公務員(自治体から雇用されている者)には、その立場や役割に応じて、それぞれに異なった勤務条件が与えられています。その内容は、地方自治 法、地方公務員法(以下「地公法」)、地方公営企業法、そして、労働基準法などの法律にバラバラに規定されており、とても複雑になっています。人事・給 与の担当者や労働組合の役員でも、必要な知識を修得している人は少ないようです。
地方公務員の勤務条件を理解するに当たって大切なのは、地方公務員が「職」で分類される場合と「職場」で分類される場合とがあるということです。具体的 には、地公法は「職」ごとに、労基法が「職場」ごとに勤務条件を決定しています。
また、地方公務員法が改正され、この4月から、これまでの勤務評定制度に替えて人事評価制度が導入されました。人事評価制度では、能力と業績の二つの面 から職員の評価が行われ、それが人事管理の基礎となるとされています。
人事評価制度は、既に国家公務員には導入されていますが、多くの自治体では初めての取組になります。そのため、手探りでの導入となっています。他にも、 かつては、懲戒免職や失職の場合は退職金は自動的に支給されないこととなっていましたが、現在では、免職処分と退職金の支給停止の処分とが分離され、支 給停止処分に対する不服申立てや裁判への対応が給与担当者の大きな課題となっています。
コモンズでは、地方公務員制度の中で、「懲戒処分」について議論しました。
今回は、地方公務員制度全般を対象として、勤務条件(給与等)や人事評価などについて、基本的なところから議論していきましょう。
1: くすのき
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2016/05/25 08:42:23
民間では、労働基準監督署が、労基法違反を監視・指導していますよね。
でも、自治体では、労基署が監督する職場と人事委員会又は長が監督機関である職場とに別れているようですね。
2: 北法研 パピコ
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2016/05/28 23:22:14
地方自治体では人事委員会又は長が監督機関である職場でも、労基法が適用
で一部除外でしょうか?
3: くすのき
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2016/05/30 11:11:48
労働基準監督機関は、「職場」単位で決定されるようですね。
原則は、人事委員会又は長。例外的に、給食調理場や水道局などの企業の職場は、民間企業と同じように労基署ですね。
4: 北法研 パピコ
- 2016/05/31 20:11:21 労基署が監督なら労基法、人事委員会なら労基法と地方公務員法適用ですか
5: くすのき
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2016/06/10 11:15:33
パピコ様
そうですね。おおむねは。
職場をどう単位づけるかも問題です。保健福祉課の職場は全体で見れば、人事委員会の管轄ですが、保健師が業務を行っている「保健係」を単独の職場と見れば、保健係だけは労基署管轄となります。
6: 北法研 パピコ
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2016/06/11 23:55:01
ありがとうございます。
一般職は職でみる。企業職員、単純労務職員、特別職も職でみる。
労基法別表第1適用は職場でみる。
でしょうか?
7: くすのき
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2016/06/20 14:05:25
そうですね。
また、職場の規模的単位も問題になります。
小学校の給食調理場の場合、各小学校の調理場ごとに「職場」とすることもできますし、また、全小学校の調理場を(物理的には離れていますが)一つの職場と見ることもできますね。
8: 北法研 パピコ
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2016/06/20 19:08:03
懲戒免職や失職での退職金の支給についてですが、
免職処分と退職金の不支給という別々の処分が下される。
そしてそのどちらに対しても取消訴訟等が提起できるということでしょうか。
9: くすのき
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2016/06/28 17:50:28
そのとおりです。
懲戒免職=退職金不支給ではありません。
失職者も同様です。
10: ぷよぷよ
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2016/06/28 22:39:42
>懲戒免職=退職金不支給
別個の処分ということですかね
そういえば、「自治実務セミナー」最新号(16年8月号)では、「1日校長」に関する住民訴訟の説明がありました
退職間際に、校長への任命を1日だけ行うことにより退職金の増額を図ったことに対し、
・任命者=教育委員会
・退職金の支給=知事
であることをもって、知事あての訴訟が十分な機能を発揮しなかった事例です
11: ぷよぷよ
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2016/06/28 22:44:37
私の自治体は、中規模の基礎自治体であり、人事委員会は設置されておらず、公平委員会の事務も、県下で共同設置された一部事務組合にお願いしている現状です
このような場合は、人事委員会が設置されている自治体に比べて「権利が制限されている」といえるのでしょうか?
【職員の競争試験・選考の実施、職員の研修その他の人事行政全般についての調査・企画・立案等の権限】
・公平委員会 なし
・人事委員会 あり
12: くすのき
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2016/07/06 16:35:29
人事委員会にあって、公平委員会にない権限は、採用試験の実施や給与勧告(報告)などのはいわゆる行政的権限ですね。
懲戒処分や分限処分に対する不服申立ての審査に関する権限には違いはありません。
13: くすのき
- 2016/07/06 16:37:22 10について。懲戒免職と退職金の支給停止を別の処分としたのは、適切な懲戒免職を行いやすくするためです。しかし、結果としては、被免職者に退職金(の一部)を支給する救済制度として機能してしまっているようです。
14: くすのき
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2016/07/06 16:40:40
ある自治体では、飲酒運転をした職員に対し停職処分を行ったのですが、その職員が懲役刑により失職したのを受けて、退職金を不支給としました。
退職金の不支給処分は懲戒免職を受けた職員や失職した職員の中でも非違性が高いものに対して行われなければなりません。「(免職ではなく)停職相当」と判断した職員に対し、不支給処分を行うことはつじつまが合いませんね。
15: くすのき
- 2016/07/06 16:44:27 嘱託職員や臨時職員について条例を制定せずに報酬を支給している自治体が意外と多いようです。給与や報酬は条例で定めなければなりません(自治法203条の2、204条)。法の不知ではなく、「職員等に支払う賃金を議会の承認なしで決定してよいはずがない。」という「相場観」が欠けているのでしょうね。
今月のまとめ
2016/7/8
地方公務員制度について、議論してきました。
地方公務員は、統一した勤務条件の下で働くことになじむ職とそうでない職とに分けることができます。前者を「一般職」、後者を「特別職」といい ます(地公法3条)。そして、一般職のことだけを地公法では「職員」と呼び、条例で定めること(地公法24条6項)等、勤務条件の定め方が規定さ れています(地公法4条)。
職員の勤務条件がきちんと守られているかを監視する機関として労働基準監督署(長)などの労働基準監督機関(以下「監督機関」)があります。監 督機関は「事業所(職場)」単位で決まっており、自治体の場合は、一般事務的な職場と教育の職場については、人事委員会(公平委員会を設置して いる場合は長)が、監督機関となります(地公法58条5項。労基法別表)。「一般職・特別職」や「常勤・非常勤」のように「職」ではなく、「職 場」で判断されることに注意が必要です。具体的には、違う職でも同じ小学校という職場であれば教員も給食調理員も人事委員会の管轄です。ただし、 学校の中の給食調理場だけを別の職場(学校給食調理場)と捉えれば給食調理員は労基署の管轄になります。
このように、地方公務員制度は複雑です。人事担当者や組合の役員は、制度をしっかりと理解した上で、単に互いの利害を主張するのではなく、「法 的な会話」によって職員と住民のために適正な勤務条件を決定していかなければなりません。