議会のしくみ
2017/6/14
議会は、自治体における重要事項について議決する機関です。自治法で定められている主な議決事項は、以下のとおりです(96条1項。他の法律にも、議決が必要な 事項は規定されています。)。
・条例の制定・改廃
・予算の策定
・決算の認定
・使用料、手数料等の徴収
・一定の基準に従い条例で定められた契約の締結
・権利の放棄
・訴えの提起、和解等
・損害賠償の額の決定
議決には、執行機関の政策実現の「手続」にとどまらず、自治体の意思を決定する効力があるものがあります。
また、議会には執行機関をチェックする役割が期待され、そのための制度として、「検査権」「監査請求権」「調査権」が自治法に規定されています。このうち調査権 については、「100条調査権」と通称される非常に権限が大きいものです。条例についても、議会自らが立案し議決することも多くなってきています。
議会の仕組みについては、議会事務局の職員以外には、勉強する機会が少ないように思います。「一事不再議の原則」「会期不継続の原則」など、言葉だけ聞いたこと がある方も少なくないでしょう。
今回は、議会に対する正しい認識を持つことを目的として、議会のしくみやその役割について、制度的の確認をしながら議論していきましょう。
1: くすのき
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2017/06/16 16:15:20
議会のしくみは、あまり知られていない部分も多いと思います。
まずは、議会での議案の審議の中心となる「委員会」について検討してみましょう。
議案は、常任委員会に付託され審議されますが、そこでの審議結果と議決とはどのような関係にあるのでしょうか。
2: ぷよぷよ
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2017/06/17 22:51:37
議会は、条例で、常任委員会・・議会運営委員会、特別委員会を置くことができます(自治法109条1項)。
「委員会制度」は、行政の広範化・専門化に対応して、議会における審議の徹底と能率的な議事運営を図るために設けられるものです。
議会から付託される事案について審査を行い、その結果を基にして本会議が運営されるという解釈でよいでしょうか。
3: ぷよぷよ
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2017/06/17 22:53:02
失礼(^^;
×「常任委員会・・議会運営委員会、特別委員会」
〇「常任委員会・議会運営委員会・特別委員会」
4: ぷよぷよ
- 2017/06/19 22:16:17 委員会への付託事項を厳密にとらえるのであれば、付託された議案に関する内容は、一般質問において触れるべきではないと考えて良いのでしょうか?
5: ぴょん
- 2017/06/21 06:54:13 うちの自治体では、一般質問終了後に、議案が委員会に付託されますので、議案について一般質問で触れるのは当然だと思うのですが、一般的にはどうなのでしょう??
6: ぷよぷよ
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2017/06/21 22:54:43
なるほど、付託のタイミングは自治体議会ごとにありそうですね。
ちょっと、「質問」と「質疑」について補足します。
「質問」は議員が行政一般について執行部に疑義をただすものであるのに対し、「質疑」は議題となっている案件について議員が討論に先立って疑義をただすことをいいます。
質問は議会の監視権に基づくものととらえられやすいですが、議会は合議体であるので、その指摘は、あくまでも個々の議員によるものであると留意しなくてはいけません。
7: ぷよぷよ
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2017/06/21 22:57:50
委員会に話を戻すと、議案の分割付託は適当でないものと解されています。
しかしながら、予算案については、各常任委員会に分割付託されている自治体議会が少なくないようです。予算は施策そのものであるので、これへの関与の要請は各常任委員会の構成議員において存在するからです。
8: ぴょん
- 2017/06/22 06:57:10 予算案については、予算審査特別委員会を設置して審査する自治体もあるのではないですか?
9: ぷよぷよ
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2017/06/23 01:01:52
予算審査に対応する委員会の在り方もそれぞれです。
ご指摘のように、会派ごとの人数に比例して構成される特別委員会を設け、予算について審議を行う自治体議会があります。
同じ構成員で翌年度に決算審査特別委員会を設け、一貫した審査を行う手法をとることもあります。
ただし、特別委員会は、一時的に設置される前提の委員会であるので、その対象は当初予算にとどまり、補正予算は分割付託とする例があります。
これに対し、予算審査に関する常任委員会を設け、補正予算も分割付託としない運用を行う例もあります。
従来は、議員の委員会への所属が1つに限られていたものが、近年、自治法改正により制限がなくなったことが、このような運用の後押しとなっています。
予算審査常任委員会の構成について、全議員が所属し、形式的に「分科会」を設け、各専門分野ごとの常任委員会の議員がこれに対応する予算審査常任委員会「分科会」に所属することにより、分割付託を避けるとともに、予算への関与を実現する例もあります。
10: ぷよぷよ
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2017/07/06 00:30:00
委員会に類するものとしては、会議規則の定めるところにより、審査・運営に関し「協議又は調整を行うための場」を設けることができます(自治法100条12項)。事例としては、全員協議会、会派代表者会議、広報委員会などがあります。
なお、「委員会」の語は、教育委員会、公安委員会、農業委員会等の執行機関の名称があるほか、長等が設置する附属機関にも「○○委員会」の名称が付されることがあります。
当然のことながら、これらは議会の委員会とは関係がありません。
11: ぷよぷよ
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2017/07/30 20:27:46
議決権以外の議会の権能についても触れておきましょう。
議会は、方公共団体の事務に関する書類等の検閲や長等報告を請求することができます。これを「検査権」といいます。
議会は、監査委員に対して、地方公共団体の事務に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができます。これを「監査請求権」といいます。
「調査権」のうち、自治法100条に基づく調査権は、罰則の規定もある強力なものです。
「意見表明権」は、自治体の機関としての議会がその意思や見解を表明する権限です。意見表明権としては、「意見提出権」「諮問答申権」「請願の受理等」があります。
12: ぷよぷよ
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2017/07/30 20:30:02
「意見表明権」のうち意見書の提出の議決は、地方公共団体の意思としての決定ではなく、地方公共団体の機関としての議会の意思の決定です。したがって、意見書の対外的な提出は議長名をもって行われます。
なお、意見書の提出がされた国や関係行政庁は、これを受理する義務はありますが、その内容に拘束されることはなく、また、回答する義務もありません。
今月のまとめ
2017/8/18
2000年の地方分権一括法の施行後、条例制定権の拡大など、自治体における議会の役割は大きくなっており、議会基本条例の制定と運用など、実績も積み重ねられてき ました。 現行の地方自治制度では、議会の議員と長がそれぞれ住民の直接選挙によって選ばれ、ともに住民の代表機関たる地位に立つ二元代表制(首長制・大統領 制)がとられています(憲法93条2項)。
これに対し、国の議院内閣制では、内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決により指名されます(憲法67条1項)。
このような制度の違いから、憲法が自治体議会に要請するのは、「与党」「野党」の概念ではなく、一体となって長に対峙することだと考えられます。なお、議会と長 が対立した場合、双方にその調整手段が備えられていますが、最終的には、議会による長の不信任議決、これに対する長による議会解散によって、住民意思に基づいて 解決されることになります。
自治体の仕事で、ある程度のベテランになると議会との関係が避けて通れません。議会の対応にはきめ細かさが求められる一方で、自治体ごとのローカルルールが多い のが現状です。初めて議会対応に携わる方は、戸惑うことも多いと思いますが、事案ごとに理解を深めていきましょう。